天体望遠鏡の購入前にビギナーが学ぶ基礎知識 ②接眼レンズ(アイピース)

接眼レンズとは

望遠鏡で、眼に接する位置にあるレンズを文字通り接眼レンズ(アイピース)といいます。物体の実像を拡大して見るのに使います。

天体望遠鏡の倍率とは

天体望遠鏡の倍率は、接眼レンズ(アイピース)を交換(ミリ数を変更)する事によって変えられます。

倍率は対物レンズまたは主鏡の焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割ることで決まるため、接眼レンズのミリ数は、天体望遠鏡の倍率に影響し、星の見え方が変わります。

しかし、倍率が高いほど遠くの星がキレイに良く見えると思われがちですが、高倍率=高性能(キレイ・くっきり見える)というわけではありません。

望遠鏡の倍率は、いくらでも上げる事が出来ますが、口径が同じであれば、ある程度以上に倍率を高くしても像は暗くなり、ボケて見えにくく、細かいところまで見えません。

どの望遠鏡にも「適正な倍率」が存在し、その値は対物レンズや主鏡の口径(有効径)で決まります。

天体望遠鏡の倍率の表現には、「最高倍率」「適性倍率」の2つあります。

天体望遠鏡の倍率
最高倍率は、口径をmmで表した数の2倍くらいが目安となっております。

適性倍率は、一般の観測では口径をmmで表した数からその半分くらいの倍率で、最も観測に適した倍率です。

 

それでは、鏡筒(対物レンズ有効径 80mm/焦点距離 910mm)を例に最高倍率と適性倍率を見ていきましょう。

 

まず最高倍率はこのようになります。

最高倍率の計算
(最高倍率)●倍 = 口径●mm × 2
 例)口径80mm × 2 = 160倍

 

続いて適性倍率はこのようになります。

適性倍率の計算

(適性倍率)●倍 = 口径●mm ÷ 2

例)口径80mm ÷ 2 = 40倍

それでは、持っている接眼レンズの倍率をみていきましょう。

倍率の求め方

(倍  率)●倍 = 焦点距離●mm ÷ 接眼レンズの焦点距離●mm

例)鏡筒の焦点距離910mmで接眼レンズ20mmの場合
鏡筒の焦点距離910mm ÷ 接眼レンズの焦点距離20mm  = 45.5倍

例)鏡筒の焦点距離910mmで接眼レンズ6.3mmの場合
鏡筒の焦点距離910mm ÷ 接眼レンズの焦点距離6.3mm =  144倍

 

接眼レンズに書かれた記号や数字の意味とは

接眼レンズ(アイピース)には記号や数字が書かれています。

例:PL 20mm

記号の部分(PL)は接眼レンズの種類、数字の部分(20)は焦点距離のミリ数を表します。

「PL 20mm」の場合、プローゼルの20mmとなります。

接眼レンズの種類は様々あり、種類によって見え味が異なります。

接眼レンズの種類

記号読み方特徴
Orオルソスコピック4枚のレンズを用いる。オルソと略して呼ばれることがある。中倍率から高倍率まで対応するかつての高級レンズ。
PL
NPL
プローゼル4枚のレンズを用いる。Orの変化形。
最近ではよく使われ、主流となっている。
比較的安価
LV
SLV
エルブイLVはビクセン社が独自開発した種類。
比較的広視界で低倍率から高倍率に対応する。
PLより高価
HRエイチアールレンズ枚数5枚(3群5枚)。
ガラス材による吸収と反射を極限まで押さえた眼視用に特化し設計。高価

倍率による惑星の見え方

鏡筒や接眼レンズによって見え方が変わることがわかった所で、実際に鏡筒と接眼レンズから惑星がどのように見えるかを簡単にまとめました。

口径低倍
(30~70
中倍率
(70~140
高倍率
(140倍以上
60mm月全体が見られる 無数のクレーターや海の表面の形状が見える シーイングの良い時にのみ使用する
80mm月全体がはっきり見られる クレーターの状態や山ひだがはっきり見える 月面の1/2が視野いっぱいになる
100mm月全体がはっきり見られる小クレーターの観察が可能 多くの裂け目や山々の詳細がわかる
150mm月全体がはっきり見られる小クレータの詳細が観察可能 小さな起状及び裂け目の詳細がわかる
土星口径低倍率
(30~70
中倍率
(70~140
高倍率
(140倍以上
60mm全体の姿がこじんまりと見える 環及び衛星タイタンが見やすくなる 本体の縞模様が見えることがある
80mm望遠鏡に導入するときに主として使う 本体の縞模様・環の濃炎・カッシーニ溝がわかる※スケッチの時は、150倍以上が見やすくなる
100mm望遠鏡に導入するときに主として使う 同上 衛星が2個見える 本体の縞模様が見え3つにわかれて見える
150mm望遠鏡に導入するときに主として使う 同上 衛星が5個見える 本体の縞模様が見え最外環がはっきりする
木星口径低倍率
(30~70
中倍率
(70~140
高倍率
(140倍以上
60mm4つの衛星の位置観測に適す 衛星の食・縞模様(2~3本)が見えやすくなる シーイングの良い時にのみ使用する※
80mm4つの衛星の位置観測に適す 縞のおおよその構造がわかる スケッチの時は、150倍以上が見やすくなる
100mm4つの衛星の位置観測に適す 縞の構造の細部がわかる スケッチの時は、200倍以上が見やすくなる
150mm明るすぎるため不適切 4つの衛星の位置観測に適す 縞の微細構造、変化が観測できる

※カッシーニ

米シーイング

※空の状態により見え方は大きく変わりますので、上記表は目安としてお使いください。出典:ビクセン

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