接眼レンズとは
望遠鏡で、眼に接する位置にあるレンズを文字通り接眼レンズ(アイピース)といいます。物体の実像を拡大して見るのに使います。
天体望遠鏡の倍率とは
天体望遠鏡の倍率は、接眼レンズ(アイピース)を交換(ミリ数を変更)する事によって変えられます。
倍率は対物レンズまたは主鏡の焦点距離を接眼レンズの焦点距離で割ることで決まるため、接眼レンズのミリ数は、天体望遠鏡の倍率に影響し、星の見え方が変わります。
しかし、倍率が高いほど遠くの星がキレイに良く見えると思われがちですが、高倍率=高性能(キレイ・くっきり見える)というわけではありません。
望遠鏡の倍率は、いくらでも上げる事が出来ますが、口径が同じであれば、ある程度以上に倍率を高くしても像は暗くなり、ボケて見えにくく、細かいところまで見えません。
どの望遠鏡にも「適正な倍率」が存在し、その値は対物レンズや主鏡の口径(有効径)で決まります。
天体望遠鏡の倍率の表現には、「最高倍率」「適性倍率」の2つあります。
適性倍率は、一般の観測では口径をmmで表した数からその半分くらいの倍率で、最も観測に適した倍率です。
それでは、鏡筒(対物レンズ有効径 80mm/焦点距離 910mm)を例に最高倍率と適性倍率を見ていきましょう。
まず最高倍率はこのようになります。
続いて適性倍率はこのようになります。
(適性倍率)●倍 = 口径●mm ÷ 2
例)口径80mm ÷ 2 = 40倍
それでは、持っている接眼レンズの倍率をみていきましょう。
(倍 率)●倍 = 焦点距離●mm ÷ 接眼レンズの焦点距離●mm
例)鏡筒の焦点距離910mmで接眼レンズ20mmの場合
鏡筒の焦点距離910mm ÷ 接眼レンズの焦点距離20mm = 45.5倍
例)鏡筒の焦点距離910mmで接眼レンズ6.3mmの場合
鏡筒の焦点距離910mm ÷ 接眼レンズの焦点距離6.3mm = 144倍
接眼レンズに書かれた記号や数字の意味とは
接眼レンズ(アイピース)には記号や数字が書かれています。
例:PL 20mm
記号の部分(PL)は接眼レンズの種類、数字の部分(20)は焦点距離のミリ数を表します。
「PL 20mm」の場合、プローゼルの20mmとなります。
接眼レンズの種類は様々あり、種類によって見え味が異なります。
接眼レンズの種類
記号 | 読み方 | 特徴 |
Or | オルソスコピック | 4枚のレンズを用いる。オルソと略して呼ばれることがある。中倍率から高倍率まで対応するかつての高級レンズ。 |
PL NPL | プローゼル | 4枚のレンズを用いる。Orの変化形。 最近ではよく使われ、主流となっている。 比較的安価 |
LV SLV | エルブイ | LVはビクセン社が独自開発した種類。 比較的広視界で低倍率から高倍率に対応する。 PLより高価 |
HR | エイチアール | レンズ枚数5枚(3群5枚)。 ガラス材による吸収と反射を極限まで押さえた眼視用に特化し設計。高価 |
倍率による惑星の見え方
鏡筒や接眼レンズによって見え方が変わることがわかった所で、実際に鏡筒と接眼レンズから惑星がどのように見えるかを簡単にまとめました。
月 | 口径 | 低倍 (30倍~70倍) | 中倍率 (70倍~140倍) | 高倍率 (140倍以上) |
60mm | 月全体が見られる | 無数のクレーターや海の表面の形状が見える | シーイングの良い時にのみ使用する | |
80mm | 月全体がはっきり見られる | クレーターの状態や山ひだがはっきり見える | 月面の1/2が視野いっぱいになる | |
100mm | 月全体がはっきり見られる | 小クレーターの観察が可能 | 多くの裂け目や山々の詳細がわかる | |
150mm | 月全体がはっきり見られる | 小クレータの詳細が観察可能 | 小さな起状及び裂け目の詳細がわかる | |
土星 | 口径 | 低倍率 (30倍~70倍) | 中倍率 (70倍~140倍) | 高倍率 (140倍以上) |
60mm | 全体の姿がこじんまりと見える | 環及び衛星タイタンが見やすくなる | 本体の縞模様が見えることがある | |
80mm | 望遠鏡に導入するときに主として使う | 本体の縞模様・環の濃炎・カッシーニ溝がわかる※ | スケッチの時は、150倍以上が見やすくなる | |
100mm | 望遠鏡に導入するときに主として使う | 同上 衛星が2個見える | 本体の縞模様が見え3つにわかれて見える | |
150mm | 望遠鏡に導入するときに主として使う | 同上 衛星が5個見える | 本体の縞模様が見え最外環がはっきりする | |
木星 | 口径 | 低倍率 (30倍~70倍) | 中倍率 (70倍~140倍) | 高倍率 (140倍以上) |
60mm | 4つの衛星の位置観測に適す | 衛星の食・縞模様(2~3本)が見えやすくなる | シーイングの良い時にのみ使用する※ | |
80mm | 4つの衛星の位置観測に適す | 縞のおおよその構造がわかる | スケッチの時は、150倍以上が見やすくなる | |
100mm | 4つの衛星の位置観測に適す | 縞の構造の細部がわかる | スケッチの時は、200倍以上が見やすくなる | |
150mm | 明るすぎるため不適切 | 4つの衛星の位置観測に適す | 縞の微細構造、変化が観測できる |
※カッシーニ
米シーイング
※空の状態により見え方は大きく変わりますので、上記表は目安としてお使いください。出典:ビクセン